【愛読書の話】
読書の秋ということで本のお話です。
本には2種類あります。
「途中で投げ出す本」と「何度も手に取りたくなる本」。
後者が愛読書=好きな本です。
鍼の専門書は約2千年前から現在まで山ほど発行されています。
私が読んだのはそのうちの一握りに過ぎません。
その一握りのなかで一番好きなのが『鍼灸眞髄』です。
正式なタイトルは「沢田流聞書 鍼灸眞髄」著者は代田文誌(しろたぶんし)。
沢田健という鍼灸師の弟子だった代田が師匠の治療や言葉を記した本です。
そんな経緯の本ですからタイトルにも気合と敬意がこめられています。
沢田健は大正から昭和初期に活躍した有名な鍼灸師・柔道整復師(現代風に言うと)でした。
たったひとりで鍼灸の古典「十四経絡発揮」の正しさを証明すべく、すべてのツボの場所と働きを確かめた探求者。
そして古典の誤りを正し、独自のツボと運用法を発見した天才でした。
そんな天才沢田健の活躍と、ちょっと変人だった素顔が描かれた本書は読み物としても面白く、勉強と娯楽を同時に満たしてくれる良書です。
私の中ではカエサルのガリア戦記と同じ英雄譚にカテゴライズされています。
きっとローマの将軍たちがガリア戦記を読んだときと同じような敬意(とツッコミ)を抱いています。
しかし現在、沢田健の治療法「沢田流太極療法」はとてもマイナーな治療法です。
その理由として沢田健の治療方法はお灸がメインであること、そして体質改善を主目的としていることが考えられます。
お灸には熱い・火傷のイメージが強く、それを全身10箇所以上に据えるとなると、かなりハードルが高いでしょう。
そして体質改善には時間がかかります。
忙しい現代人にはゆっくりと結果を待つ余裕が失われてきています。
このように沢田流太極療法をそのまま採用するのは難しいのです。
そこでこれを解体して鍼で部分的に運用することで沢田健の英知を活用できないか模索しています。
ほんの一部だけですが、すでに施術で使用しています。
優れた本は知識の宝庫です。
その一部でも皆様に施術やブログで還元できたとき、知識は活きるのだと思います。
沢田健も「書物は死物である、これを生きた人体によって読め」と施術で知識を活かしたのですから。
増渕 一成 (鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師)
栃木県鹿沼市出身
趣味は読書、熱帯魚、落語鑑賞。
活法研究会の提唱する碓井流活法(整体)と整動鍼法を施術の2柱としている。
活法研究会会員。
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